三四郎について。芸人の三四郎じゃないよ夏目漱石の方だよ。


普段、数学の論文ばかりに目を通しているとどうしても不意に活字を読みたくなる瞬間がある。

高校生の時に夏目漱石の「こころ」を読んだが、湿っぽくてぼやっとした印象しか持てなかった。国語の先生は好きだったので他に漱石の作品でお薦めの作品はないかと訊いたら、「三四郎」を薦められた。

そんなことを思い出しながら最近は「三四郎」を読んでいる。少し前まではタイムリーな作品らしく、朝日新聞では106年ぶりに再連載がされているそうだ。僕自身は普通に文庫本で読んでいるが。

「三四郎」の序盤、三四郎が田舎から東京に登る汽車の中で出会う女がいるが、この女の作中での雰囲気が実に良いと思う。

途中、名古屋で汽車を降りた際に、三四郎は女と宿で一夜を共にするが、三四郎は女の積極的な誘惑(ではないか。。。)にただ困惑し、受け入れることはしなかった。次の朝、落ち着かない気持ちのまま女と別れを告げる。

別れ際、女は三四郎にこう告げる。

あなたはよっぽど度胸のない方ですね。

(と言って、にやりと笑った。)

。。。。。。

三四郎はその後東京行きの汽車の中で、女とはああも落ち着いて平気でいられるものなのか。無教育なのか。大胆なのか。と驚き、と同時に、23年(三四郎は23歳である)の弱点が一度に露見したような心持ちになるのである。

三四郎が出会った女のような女性が現実の世界にいるのかはわからないが、もしいるとしたら是非会ってみたい。できれば京都からの汽車(新幹線か)で乗り合わせたら面白い。

作中に女の外見についての描写はほとんどないのだが、女の振る舞いや言動から「女」の艶かしさを感じさせてしまう漱石の表現力を尊敬する。

未読の方は是非。

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