「数学は嫌いだけど、難しい話は抜きにして数学の魅力を知りたい」、「数学が嫌いだけど、数学者が見ている世界を知りたい」
こんな疑問にお答えする、おすすめの数学関連の読み物をご紹介します。
・数学は難しくて、計算ばかりでつまらないもの。
・学生時代、数学には苦労させられたわ。
・数学はできないけど、数学ができる人の頭の中をのぞいて見たい
こんな気持ちの方、意外と多いのではないでしょうか。
そこで、大学院まで数学を専攻していた筆者が、「数学嫌い」でも楽しめるおすすめの数学にまつわる読み物をご紹介します。
数学の読み物って?
一口に「数学の読み物」と言っても、いろいろな切り口の本があります。
まずは、ざっくりどんな切り口の読み物があるかご紹介します。自分が読んでみたいなと思えるジャンルを探してみてください。
① 数学の内容をわかりやすく噛み砕いた系
数学のトピックを、なるべく専門用語や数式を使わないで、初心者にもわかりやすく”雰囲気”を解説した読み物です。
当然、数学的な厳密性には欠けますが、初心者がそのトピックを知るための入り口として読むとそのあとの勉強に繋がるのかなと思います。
「専門的な話は抜きにして、その数学のトピックがどんなことを扱っているのかサクッと知りたい」という方におすすめです。
② 数学関連の小説系
数学を題材とした小説や実話に基づくノンフィクションです。
数学的な内容というよりかは、数学者を巡るドキュメンタリーだったり、数学者を主人公にした小説だったりがこのジャンル。
専門的な難しい話よりかは、数学を巡る人についての話を読んでみたいという方におすすめです。
③ 数学関連のエッセイ系
数学者の中には、一般の数学プロパーじゃない人に彼らがみている世界を共有したいと考えている人も多くいます。
そんな彼らは、独自の世界観や思想に基づくエッセイだったり、伝記だったりを残しているものです。
普段は、孤独に数式に向かいあう数学者がどんなことを考えているかを知りたいという方におすすめです。
数学が嫌いな人におすすめの数学の読み物
それでは、僕が個人的におすすめする数学の読み物をご紹介します。
数学が嫌いな人でも、その魅力を感じられるようなものなので、ぜひ手にとってみて欲しいです。
まずは、数学の内容をなるべく簡単に解説してくれるような読み物が読んでみたいという方にはこちら。
数学ガール (数学ガールシリーズ 1)
主人公の「僕」と、それを取り巻く女の子による、数学をめぐるお話です。
青春らしい、甘酸っぱいストーリーもあり、小説のように読むこともできます。
青春小説の一面もありながら、高度な数学の話題(1巻はゼータ関数とバーゼル問題が主題)を扱っています。
主人公の「僕」や彼を取り巻く女の子たちが数学の”思考のプロセス”を展開してくれるので、一緒に勉強を進めることができます。
僕も、この本で数学の虜になりました。未読の方はぜひ、一読をおすすめします。
トポロジカル宇宙 完全版―ポアンカレ予想解決への道
図形の形を研究する「位相幾何学(トポロジー)」と呼ばれる分野とそれに紐づく「ポアンカレ予想」について、数学の専門家でも理解できるように解説した好著です。
“4次元空間”の目を読者に持ってもらうことで、「ポアンカレ予想」をキーワードに宇宙の形などについて解説しています。
数学者が見ている「トポロジーの視点」を平易に解説してくれている本はあまりないのでおすすめ。
著者の根上生也先生はNHKで「数学探偵」を演じるなど、一般向けに数学を解説することに定評がある方です。
数学の細かい話はいいから、数学を題材にした面白い小説を教えてという方には、以下の2冊をおすすめします。
フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
数学の世界において、もっとも有名かつ難解な問題として、350年間もの間未解決であった「フェルマーの最終定理」についてのノンフィクション小説です。
この難解な問題に果敢にも挑んだ数学者アンドリュー・ワイルズと彼の証明までに至る数々のドラマが軽快な筆跡で描かれています。
サイエンスフィクションの傑作とも一部では考えられているほど、全ての人を魅了する内容です。
僕も3回は読み直すくらい、単に数学という学問的側面ではなく、ワイルズの証明に至るまでの苦悩など人間的ドラマに惹きつけられます。
およそ数学に興味関心がある方なら必読の書です。
完全なる証明―100万ドルを拒否した天才数学者 (文春文庫)
「ミレニアム懸賞問題」と呼ばれる1億円の懸賞金がかけられた7つの未解決問題のうちの一つ「ポアンカレ予想」を完全解決したことで、有名になった数学者グレゴリー・ペレルマンを巡るノンフィクション小説です。
そんな彼をさらに有名にしたのが、その賞金の1億円を受け取らなかったということ。
「なぜ、ペレルマンは賞金の受け取りを断ったのか? 」、それだけでなく世界中の一流大学から舞い込んだポストの申し出も断り、数学における最高の栄誉であるフィールズ賞も辞退。
数学者ばかりか、ほとんど全ての人と連絡を絶ち、森へ消えた・・・。世界中の人を驚愕させたペレルマンの行動の謎とは一体なんだったのか?
気になる方はぜひ、本書を読んで見てください。
「数学者が一体どんな人なのか? 数学者が考えていることをのぞいて見たい」、そんな方には以下の2冊がおすすめです。
いいたかないけど数学者なのだ (生活人新書)
日本が誇る代数幾何のリーダーである飯高茂先生の自伝的エッセイです。
自身が数学に興味を持つようになっていかにして数学者になったのかについて、飯高先生の畏友である新谷卓郎さんとのやり取りを含めてみずみずしく描かれています。
この新谷卓郎さんは、数論の世界で非常に重要な役割を持つ「ゼータ関数」について独創的な研究をした人で、現在でも「新谷ゼータ関数」と呼ばれるものが活発に研究されています。
畏友である飯高先生から見た新谷(書籍内ではS君)の印象やある種の羨望の眼差しなどを読み取ることができます。
数学者がどんな人生を歩んできたのかを知ることができる良書です。
生きること学ぶこと (集英社文庫)
日本人で2人目のフィールズ賞受賞者として有名な数学者広中平祐先生の著書です。
先ほどの飯高先生と同様、代数幾何学が専門で「標数0の体上の代数多様体の特異点の解消および解析多様体の特異点の解消」という論文でフィールズ賞を受賞しました。
この本はそんな世界的な数学者である広中先生が、自らの半生を振り返って語り、学ぶことの喜び、創造して生きることの愉しさを飾らない言葉で伝える、今を生きる若者へ贈る人生論です。
激動の時代に、「学ぶ楽しさとは?」、「生きがいとは?」を筆者の経験をもとに追求した記録とも言えます。
僕も高校生の時に読んで、非常に影響を受けたのを覚えています。
数学だけにとらわれず、広く学問を学ぶ意味について考えたい方にぜひ、おすすめします。
まとめ
数学って、なかなか自分で勉強するのは難しいです。
学校で数学ができなくて嫌いという方もたくさんいるかもしれません。
でも、そんな数学に打ち込む人たちにはどこか魅力的な部分があって、それは数学が好きではないという人も魅了するものではないかなと個人的には思います。
ここで紹介した書籍が全てではもちろんありませんが、単に計算や数式だけではない数学の”情緒的側面”に目を向けていただけたら幸いです。